新たなエネルギー基本計画:「原子力の最大限活用」の素案決定
皆さま、yat to came(お久しぶりです)。
ふランス人です。
お久しぶりですが、エネルギー基本計画がパブリックコメントにかけられていることをご存じでしょうか。
https://public-comment.e-gov.go.jp/pcm/detail?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=620224019&Mode=0
本記事はこの新しいエネルギー基本計画の決定にあたり、経済産業省の開催した「総合資源エネルギー調査会 基本政策分科会(第67回会合)」*を元に、新たに制定されるエネルギー基本計画(案)をレビューしたいと思います。
*https://www.enecho.meti.go.jp/committee/council/basic_policy_subcommittee/2024/067/
今回のエネルギー基本計画で核エネ(原子力)は以下が大きなトピックスとなります。
- 原子力エネルギーの位置づけが転換 「安全を前提に最大限活用」へ
- 各電源種別のコスト検証:原子力のコスト競争力が評価
- 核エネ推進の施策記載(⽴地地域との共⽣、バックエンドプロセス、安全性の確保を⼤前提にした再稼働、次世代⾰新炉の開発、次世代⾰新炉への建て替え、六ヶ所再処理⼯場の竣⼯等のバックエンド問題の進展etc.)
では内容をmit ter yaha(ご覧になって下さい)。
原子力エネルギーの位置づけが転換 「安全を前提に最大限活用」へ
・従来(第6次)のエネルギー基本計画(2021年10月発行)では核エネ(原子力)は「可能な限り原発依存度を低減」といわれておりました(端的にいうと、核エネは”あと数十年後には消滅してヨシッ!”と言われていた)。今回180度変わり、「再生可能エネルギーと原子力などエネルギー安全保障に寄与し、脱炭素効果の高い電源を最大限活用」というスタンスに大幅変更となりました。
この背景として、
– ロシアによるウクライナ侵略や中東情勢の緊迫化などの経済安全保障上の要請が⾼まる。
– DXやGXの進展に伴う電⼒需要増加が⾒込まれる。
が挙げられています。ただし原案の記載にありますが、
再生可能エネルギーか原子力かといった二項対立的な議論ではなく、再生可能エネルギー、原子力などエネルギー安全保障に寄与し、脱炭素効果の高い電源を最大限活用することが必要不可欠である。
と記載があり、決して核エネ一本足(原子力オンリーで推進)ではない、という趣旨です。
ニュース報道では原子力に国のエネルギー資源をすべて投入といった印象を受けますが、実際にはどちらかといえば主軸は再生可能エネルギー(以下「再エネ」)で、再エネとセットで「最大限活用」という趣旨となっているということの理解が大切だと考えます。
「特定のエネルギー源に依存しすぎない」というのが趣旨であり、(一つのエネルギーが失敗したときの反動が大きい。)選択肢をたくさん持っておく。という戦略になります。これは考えているな。という印象でした。(黒﨑委員も同様の趣旨を発言)
各電源種別のコスト検証:原子力のコスト競争力が評価
今回のエネルギー基本計画の議論にあたり、どのエネルギーがコスト競争力あるか「発電コスト検証ワーキンググループ」で検討されていました。
この中で結論として、核エネ(原子力)は再エネとともに競争力ある電源として評価されております(下図)。(モデルプラント方式による2023年の発電コストを例に抜粋します。他のケースも多数検討されており、あくまで一例です。)
(総合資源エネルギー調査会 基本政策分科会(第67回会合)資料1「発電コスト検証に関する議論について(概要)」より抜粋)
あくまでもこの図では核エネがコスト競争力があるように見えますが、あくまでもモデルケースとして試算した値であることに留意して下さい。議論の中でも「原子力だけ安い」から原子力つかおうという流れにならないよう、数字が独り歩きしないことを懸念されていました。あくまでも試算値したケースの参考値でしかないと頭で受け取っていただければと思います。
核エネ推進の施策記載(⽴地地域との共⽣、バックエンドプロセス、安全性の確保を⼤前提にした再稼働、次世代⾰新炉の開発、次世代⾰新炉への建て替え、六ヶ所再処理⼯場の竣⼯等のバックエンド問題の進展etc.)
これが今回の改定で大きいポイントだなと、ふランス人的には感じました。
この違いを把握していただくため、前回第6次(2021)年と今回第7次の、エネルギー基本計画本文に記載される事項を骨子・目次ベースで以下の表で比べてみたいと思います。
前回(第6次)のエネルギー基本計画(2021年) | 今回(第7次)のエネルギー基本計画(案) |
(6)原子力政策の再構築 ①原子力政策の出発点-東京電力福島第一原子力発電所事故の真摯な反省 ②原子力利用における不断の安全性向上と安定的な事業環境の確立 ③対策を将来へ先送りせず、着実に進める取組 (a)使用済燃料問題の解決に向けた取組の 抜本強化と総合的な推進 (ア)高レベル放射性廃棄物の最終処分に 向けた取組の抜本強化 (イ)使用済燃料の貯蔵能力の拡大 (ウ)放射性廃棄物の減容化・有害度低減 のための技術開発 (b)核燃料サイクル政策の推進 (ア)再処理やプルサーマル等の推進 (イ)中長期的な対応の柔軟性 ④国民、自治体、国際社会との信頼関係の構築 (a)東京電力福島第一原子力発電所事故を 踏まえた広聴・広報 (b)立地自治体等との信頼関係の構築 (c)世界の原子力平和的利用と核不拡散・ 核セキュリティへの貢献 | ①総論 ②今後の課題と対応 (ア)原子力政策の出発点 -東京電力福島第一原子力発電所事故の教訓を踏まえた不断の安全性追求 (イ)立地地域との共生・国民各層とのコミュニケーション (ウ)バックエンドプロセスの加速化 (a)核燃料サイクルの推進 (b)円滑かつ着実な廃炉の推進 (c) 高レベル放射性廃棄物の最終処分に向けた 取組の抜本強化 (エ)既設炉の最大限活用 (オ)次世代革新炉の開発・設置 (カ)持続的な活用への環境整備、 サプライチェーン・人材の維持・強化 (キ)国際的な共通課題の解決への貢献 |
こちらの表を見ていただき、ふらんす人的には以下ポイント2点感じてください。
- 原点となる「原子力政策の出発点 -東京電力福島第一原子力発電所事故の教訓を踏まえた不断の安全性追求」は不変
- 核エネ推進施策の強化(サプライチェーン・人材の維持・強化他)
まず「原子力政策の出発点 -東京電力福島第一原子力発電所事故の教訓を踏まえた不断の安全性追求」は核エネ業界の皆様はしっかり反省し、引き続き普段の安全を追求してほしいですね。文案にある以下記載を見てください。
東京電力福島第一原子力発電所事故について、国・事業者が「安全神話」に陥り悲惨な事態を招いたことを片時も忘れず、真摯に反省するとともに、その教訓を踏まえ、このような事故を二度と起こさないよう弛まぬ努力を続けることが必要である。
事故を二度と起こさないよう、弛まぬ努力を業界の人には続けて頂ききたいですね。
一方で、核エネ推進の記載も見られます。ふランス人的には以下が大きいなと感じました。
また、我が国の原子力産業・人材基盤は、高い国産化率と技術を誇り、国内経済や雇用に対する貢献度も高く、既設炉の再稼働や革新軽水炉・小型軽水炉等の次世代革新炉の開発・設置に向けても不可欠である。震災以降の新規建設案件喪失で、この基盤が脅かされつつある中、将来的な建設期間長期化・コスト増加や、機器・部素材・燃料加工・廃炉を含めた産業基盤・技術の途絶、規制対応の面を含めた原子力人材の不足等を回避する必要がある。そのため、産業界、官公庁が連携した原子力サプライチェーンプラットフォームを通じ、一般産業品活用等の事業承継支援、部品・素材の供給途絶対策、人材育成・確保支援を拡充するとともに、「未来社会に向けた先進的原子力教育コンソーシアム」(ANEC)などの関係機関の協力枠組みを活用しつつ、スキル標準導入等の人材育成施策や産学官の交流を関係省庁が連携して進める。また、新試験研究炉を含む研究基盤・人材育成体制を構築する。また、国内の次世代革新炉開発・設置に向けて産業基盤を維持・強化する意味でも、市場拡大が想定される海外
プロジェクトへの参画を官民で後押ししていく。
また、いろんな意見が参加した委員から多様な意見が出ていました。印象に残ったものは以下の通りです。
国民や産業界にどう説明していくのか、国民生活の基盤、国際産業力の強化を確立するエネルギー政策であることを打ち出す、特に6次とどう変わってきたか、特にAIによる電力消費があることを打ち出すことが重要。若い世代は理解があるが、年配の人たちは理解できない。その打ち出しが重要であり、経済合理性を持ったエネルギー政策を行う。コスト負担が重くなる中での、経済合理性を重要しした背策ですすめること。 エネルギーの構成を打ち出す中で、精緻なものを確定するのは難しいが、状況に合わせて柔軟に対応することを付記しておくのがポイントである。
原子力の将来像について
立地地域として、安全最優先で、原子力の将来像が明確にすること。今回の計画では、原子力を最大限活用」ということで明記された。一定の方向が記載された。一方で、福井県では7基起動しているが、全国では14基にとどまっている。昨年度もまだ8.5%。目標の20-30%に遠く及ばない。
将来の電力需要の増加といった大きな変化が生じる中で、2040年以降既設炉が急速に減少することを踏まえて対処する必要がある。
国は2040年に2割を掲げるだけでなく、その後を見据えた原子力の規模の確保など、今後を見透けて具体化すること。
また、次世代の革新炉;安全技術導入したもの、わかりやすく国民に説明すること。わかりやすく説明すること。国が責任をもって明らかにすること。
これまでの「原子力の依存度を可能な限り低減」から、最大限活用という記載に代わっている。私はこの方針変更は国民的な議論が必要と主張している。国民的議論を1年かけて熟議プロセスをかけることを強く望む。
国民の賛同を得られるかもしれないし、このまま民意を聞かずに、変更した場合、行政との信頼関係に逆行する。
様々な意見が出ていますね。皆様、もご意見あると思うので、上記パブコメより、ぜひパブコメしてください。
それでは本日もレビュー見ていただき、ありがとうございました。