規制動向(第41回原子力規制員会)
原子力規制員会による定例会合
2024年11月6日に国(原子力規制員会)の定例の会合が開催されました。
第41回原子力規制委員会 令和6年11月6日
議題は以下の3議題。
- ①関西電力株式会社美浜発電所の発電用原子炉設置変更許可申請書(3号発電用原子炉施設の変更)に関する審査の結果の案の取りまとめ―減容したバーナブルポイズン保管場所変更―
- ② リサイクル燃料貯蔵株式会社リサイクル燃料備蓄センターにおける使用済燃料貯蔵施設に対する使用前確認
- ③ 国土地理院による活断層図の公開を踏まえた高速増殖原型炉もんじゅに対する対応
この3議題に対する結論は以下でした。
①関西電力の申請(美浜原子力発電所でのバーナブルポイズンの保管場所の変更)に対し、国が許可する方針(関西電力の発電所運営が一歩前進)
②リサイクル燃料貯蔵株式会社に対し、国が中間貯蔵施設の使用についてお墨付を与える(使用前確認証を交付による、操業に対するGOサイン)
③高速増殖原型炉もんじゅの地下に活断層がある可能性が疑われるが、国は追加の対応は不要と判断(安全性に対する大きな影響なし)
各議題について、見てまいりましょう。
関西電力株式会社美浜発電所の発電用原子炉設置変更許可申請書(3号発電用原子炉施設の変更)に関する審査の結果の案の取りまとめ―減容したバーナブルポイズン保管場所変更―
まず、「バーナブルポイズン」についてお話を。
たとえ話ですが、かまど(原子炉)にまき(核燃料)を入れる際に、新しいまき(核燃料)を入れると過剰に燃えすぎてしまい、すぐに燃料が燃え尽きる等いろいろと困るため、あらかじめ過剰に燃えないよう燃えにくい不燃材等を同時にくべることが必要となり、その不燃材に該当するのがバーンナブルポイズン(日本語訳:可燃性毒物)です。資料によると関西電力の原子炉では約400mmのロッドを炉心に挿入しているようです。
議論の中で、杉山委員が中性子の効率の観点での阻害物質(poison)という趣旨で日本語だと“可燃性毒物“という訳なので”毒物”という言葉が誤解されないよう役人に指摘する一幕もあり、やはり理解されにくい単語だとと感じます。(^^ 日常会話で「可燃性毒物」って、皆さんは使ったことがあるでしょうか?
前置きが長くなりましたが、このバーナブルポイズンは使用後の扱いが困りどころ。運転中の原子炉に入れることで、放射性物質となってしまいます。使用済み燃料プールで保管しているものの、運転継続に伴い保管場所がなくなって困るのです…((+_+))。
この課題に対して関西電力は、「発電所構内の他の保管場所にキャスクにいれて保管させてください。」という保管場所の変更許可を国に申請し、国は安全性が確保されていることを条件に許可する方針となった次第です。
具体的には強い放射線を出すバーナブルポイズン、変更場所を変えて大丈夫なの??という不安、疑問に対して国は審査をし、安全性が確認され関西電力の申請に許可することとしています。
議論の中で放射線に対する安全性特に強い放射線(ガンマ線)を出すコバルト60等に対する扱いや遮蔽について、杉山・伴委員から質問があったものの、いずれも事業者の評価は妥当なものであるとの説明がなされ、許可をすることに。
5人全員が賛成し許可をすることとなった。今後、法令に基づく手続き(原子力委員会、経済産業大臣への意見聴取)でしばらく時間かかるものの、関西電力の変更許可申請は無事に通ったことに。
リサイクル燃料貯蔵株式会社リサイクル燃料備蓄センターにおける使用済燃料貯蔵施設に対する使用前確認
本議題では、青森県むつ市に新設された使用済燃料貯蔵施設に対し、操業許可の最終的なお墨付きが事実上なされました。
そもそも、使用済み燃料貯蔵施設って何ぞや?となるところですが、本日は説明が長くなってしまうので割愛ですが、本決議を持って、青森県の新たな核エネ拠点が事実上の稼働となります。
安全性について大きな議論はないものの、以下のやり取りが気になりました。
原子力発電所よりもリスクは低いが、原子力規制員会発足後、初めての付議のもの。リスクは低いが、しっかりと確認を行ったというもの。例えばどのような検査が行われたか、1-2例事例を教えてほしい。(山中委員長)
(日本語訳:国の立場で、主体的に安全性をちゃんと見ているということを、1-2事例挙げてPRしてほしい。)
事業者検査ガイドを用いて実施している。ガイドでは1~3号検査があり、1号の材料、寸法、外観、機能検査(閉じ込め機能・徐熱機能検査・遮蔽機能、臨界防止・) …略… 3号(全体確認:その他の検査、品質マネジメント検査)を実施している。(役人)
(日本語訳:定められた手順に基づいて、チェックしています。)
微妙にかみ合ってないんだよなぁ(-_-;)。手続きは問題ではなく、何を見ることで、安全・安心を担保するのか、むつ市や青森県の人に向けて主張して欲しいところでした。「The役所回答」の観点としては満点であり無難な回答でしたが、今後の運営に向け、特に何に注力して確認したか、国として更にPRして欲しかった。トップである山中委員長の折角の呼び水がフイに。。。実際質問された役人の方もテンパってしまい、ベタな回答しか出来なかったというところなのかな・・
ともあれ、結論として安全性について異論はなく、今後の使用済燃料貯蔵施設の安全な運用にGOサインを出すことに、5人の委員は全員賛同。むつ市で操業される施設が今後、安全に規制検査されることを期待します。
国土地理院による活断層図の公開を踏まえた高速増殖原型炉もんじゅに対する対応
核エネを勉強した誰もが、つい夢見ちゃう理想の核エネ炉-高速増殖炉-。残念ながら運転後に発生したナトリウム漏れ事故や運用元である日本原子力研究開発機構の不祥事等で、ろくに稼働することなく廃止措置を実施している高速増殖炉「もんじゅ」ですが、令和6年10月29日に国土地理院より福井県及び滋賀県の一部を含む活断層図今庄(いまじょう)が公表され、その中にもんじゅの敷地に活断層がある可能性があり、その対応をどうするか議論したもの。
(日本語訳:もんじゅの地下に活断層がある疑いが判明。この活断層の影響は大丈夫なのか、追加で耐震性を評価する必要はないのか議論)
前置きが長くなりましたが論点は2点
- 今回問題となった推定活断層の扱いについて、今後どのような取り扱いをするか
- 仮に活断層があった場合、活断層が動き大規模な損壊がもんじゅで発生した際の対応は大丈夫か
この二つの論点に対し、白熱した議論の結果は以下となりました。
・推定活断層は、知見を管理する仕組み(通称「新知見」)で扱うか別途検討。
・大規模な損壊が発生した場合でも、大規模損壊が発生した場合の対応手順・体制等が定められていることに加え、安全性に影響を及ぼすナトリウムが管理されている状況なため結果的に安全性は保たれる
そもそも、活断層ってなかなかなじみのない言葉ですよね。自分もあまりなじみがないです。論点としてこの活断層が本物なのか、ちゃんと考えていく必要があるか、今後とも継続議論されることとなりました。継続して規制員会には油断なく管理・検討していただきたいところですね。
最終的には「廃止措置中のもんじゅへの影響、仮に活断層であっても大きな影響はない(燃料、ナトリウム等が安全な措置が講じられているため)。この安全性は廃止措置の中での確認がされている。今回の知見は、新しい知見として対応するかの要否は、今後の検討会で検討。廃止措置中のもんじゅに影響があるものとは考えていない。」(山中委員長)として、案件としてクローズされることに。
国やもんじゅの管理元である原子力機構には、活断層の有無に関わらず、しっかりと管理していただきたいところですね。
それでは本日はここまで。今日も、一読して頂き、ありがとうございました。
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