運転再開中の女川原子力発電所のトラブルの原因と対策の公表(東北電力プレスリリース)

東北地方の核エネ期待の星、女川原子力発電所2号機で、2024/11/3に運転を再開の過程において移動式炉心内計装系のトラブルが発生して、原子炉を停止することになった件について、東北電力より原因と対策についてプレスリリースがありました。
女川原子力発電所2号機における移動式炉心内計装系の点検結果に係る原因と対策について
https://www.tohoku-epco.co.jp/news/atom/1245864_2549.html(東北電力HPより引用)
本日は、この東北電力プレスリリースについてレビューしたいと思います。
まずこのプレスリリースの結論は以下の通り。
- トラブルの原因:運転再開前に点検した設備のメンテナンス不備(ナット締め付け不足、緩み)
- トラブルへの対策・対応:メンテナンス時の対応強化(手順の見直し、現場立会での確認、関係者への注意喚起)
- 女川原子力発電所の運転再開は再発防止対策を確実に実施し、安全確保を最優先に対応
それでは見てまいりましょう。
トラブルの原因について
そもそもトラブルが発生した設備「移動式炉心内計装系」ってご存じでしょうか。
東北電力HPに「原子炉運転中において、原子炉内の中性子を計測する検出器の校正等を行う設備。(原子炉内の案内管を移動式炉心内計装系の検出器が移動し、炉内の中性子を測定する)」と書いてあります。ふランス語で車にたとえてみると、運転中の車のエンジンの回転数系(タコメータ)がちゃんと正しいか確認するため、回転しているエンジン内に計測期を入れて回転数計とあっているか比較できるようにするもの。
語ってみたのですが、たぶんこれは伝わりにくい感じしますね。。。
とりあえずこの重要な計器ですが、女川2号機の起動に伴って使用(走査準備)したところ、動かなくなっなった(引き抜けなくなり)、原子炉の運転再開を一旦止め、原因調査をし、原因と対策が判明したため、今回のプレスリリースとなりました。
まず、原因の経緯について、この計器は過去メンテナンスしており(2024年5月に交換作業)、その際、以下の問題があったと記載しています。
本事象に係る要因となったナット締め付け不足、緩みが生じた原因は以下のとおり。
(1)移動式炉心内計装系の案内管の締め付け作業に関する作業手順に以下の項目が明記されていなかった。
a.伸縮継手と案内管の接続作業を行う際の締め付け方法に関する留意点。
b.継手接続作業において、締め付け時に緩み方向の力が発生する可能性のある箇所に関する注意事項。
(2)移動式炉心内計装系の案内管の締め付け作業後に、締め付け状態の確認を行っていなかった。
(3)作業員は締め付けが不十分となる可能性がある構造であることを、十分に理解していなかった。(東北電力HPより引用)
ふランス語で書いてあるように見えるので、以下の通り訳しました。
(1)手順書が十分でなかった(特にナットの締め付け管理)
a.接続作業での注意事項
b.緩む可能性のある個所への注意事項
(2)作業後のチェックが不十分だった。
(3)作業員に対する教育が不十分だった。
この記載内容について、あくまでも東北電力が点検を依頼するメンテナンス請負先の作業不備の原因としてあるのは十分かと思います。一方で、東北電力のメンテナンス部門の管理・関与が記載されていないのが、残念かなと感じました。((1)~3の主体がメンテナンスの請負先の話(請負先の作業員が悪い、作業手順が悪いetc.)になっていて、東北電力の管理部門に何が不足していたか書いていない。)
例えば、「運転に影響を及ぼす機器としてリストアップし、厳重管理や起動前に動作確認するべきであった。」「作業員に対して教育を充実するようなメンテナンス委託を予め発注出来ていなかった。」など、さらに一歩、電力会社側の原因に踏み出していただくと、よりよくなるのではと感じました。
対策:メンテナンス時の対応強化
これらのトラブルの原因が明確になったことまではOKですが、次に、この原因の対策が出来ないと、原子炉を運転できませんね。
他に締め付けが不十分で機器が壊れる可能性があるかもしれないのに、車運転できるの??という話になってしまします。
このため東北電力は対策を以下に実施するようです。
【再発防止対策】
(1)施工者が実施する移動式炉心内計装系の案内管の締め付け作業に関する作業手順について、確実に固定し、供回りや締め付け時に緩み方向の力が発生することを防止する手順とし、この手順を当社が承認する。(2)締め付け作業後に接続部のトルク管理を実施し、確実に締まっていることを確認する。また、これらの作業には当社が立会い、締結状況を確認する。
(3)上記手順の改正については、作業を担当する作業員への周知を行うとともに、今回の事象について作業責任者への教育資料に事例として記載を行い、継続的に注意喚起を行う。
(水平展開)
当社としては、本事象の重要性を踏まえ、各種工事における締め付け作業について、継続して確実な施工管理に努めていく。
(東北電力HPより引用)
このふランス語を訳すと以下といったところですね。
(1)手順書が不十分な点(特にナットの緩み発生への留意)が内容に、しっかりと手順書を充実させ、東北電力が手順書が確実に確認
(2)作業中に締め付けがちゃんとできているか確認(トルク確認)し、メンテナンスの請負先任せにせず、東北電力の管理部門が主体的に確認
(3)同じことが繰り返さないよう作業員に周知し、メンテナンス請負先の責任者にしっかりと教育し継続的に注意喚起することで再発を防ぐ。
(今後他に同様な事例が起きないような対策)このトラブル(ナットの緩み発生)は重要な知見なので、他の同様なケースが発生しないよう継続して施工管理する
定番の対策(手順書、現場での立会管理、再発防止教育)を検討しています。安心です。
ここでさらなる水平展開がもう一歩東北電力が頑張るべきところで、ハードルが高い対策だなと感じました。今後、安心した女川発電所の運転のため、頑張ってもらいたいところですね。
女川原子力発電所の運転再開について
で、結局のところ、「トラブルへの対応は終わって、いつ発電するのでしょうか、核エネはまだですか?」と、皆さん聞きたくなるところかと思います。
これに対して東北電力のスタンスは「当社といたしましては、今回策定した再発防止対策を確実に実施し、引き続き、安全確保を最優先に、一つひとつのプロセスを丁寧に進め、女川原子力発電所2号機の再稼働(発電再開)に向けて着実に取り組んでまいります。」となっております。
これは非常に良いですね。まずは一つひとつ、ちゃんとやる。という基本動作をちゃんとして、東北電力には安全な対応していただきたいです。
本日のレビューは以上です。
本日もレビューを見ていただ、きありがとうございました